本屋大賞がまもなく発表されます。今年のキーワードは「ウェブ小説」だと思います。

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「インターネット上で公開された作品が書籍化されていてそれが売れている。それも文芸作品の半分以上も占める勢いだ。」という話を知人にしたところ驚かれました。作家は出版社に原稿を入れて、出版社がそれを書籍化するというイメージが崩れたといわれました。でも出版社が作家を育てる時代は昔の話で、いまや読者が作家を育てる時代なんだといっても素直に信じてくれそうにありません。

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飯田一史氏の「ウェヴ小説の衝撃」によると「日本の文芸作品の売り上げの半分近くが、ネット由来のウェブ小説が占めている」のだそうです。ウェブ小説は出版社が主催する旧来型の「新人賞」を凌駕して、新人作家の供給源になっているといいます。

こうした流れに乗り遅れるなとばかりに、本ブログを主催する「はてな」もKADOKAWAと共同で小説投稿サイト「カクヨム」をスタートさせたというわけです。

「ネットの投稿作品は誰でもタダで読めるのだろ」「誰でも投稿できるということは、ミソもクソも一緒じゃないか」と知人はこの流れに疑いの目を向けています。

勤務先でもいえるのですが、稟議書や伝票など、一般に紙に書かれたものは、それ自体が完成品としてとらえられます。紙に書けばお墨付きをもらったものだととらえるのが常識です。この感覚がそのまま小説のような文芸作品にも当てはまります。「本になったものが作品だ」と信じて疑わないという姿勢です。

印刷する手間と経費がかかる。作り直すのにはもっとかかる。紙にするという壁が、作品の「完成形」を支えているに過ぎないことを、ウェブ小説はあたかも裸の王様のように読者に示してくれたようにも思えます。

ところが、ウェブという環境の中で創作物は変化します。読者の反応が数字として表れることから、作り手側は反響をもとに作品の内容を変えていきます。読者から届いた電子メッセージをもとに数秒後には作品が書き換わるという事例は希ではありません。

無料で読めることから自力で多数の読者を獲得することも、敷居を低くします。読者の一部でも書籍版を購入してくれれば商売になります。

Kindleやe-bookなどのように版元からダウンロードして読むだけが電子書籍ではなく、版元をスルーして作り手と読み手が作り上げる世界が急速に広がっている、時代認識を新たにすることで、本屋大賞の持つ意味が見えてくるように思います。

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